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庄野潤三さん『星に願いを』、草野正宗さん(スピッツ)「つぐみ」(よかった詩さがしノート5)

「つぐみ一番のり(三月十九日)。
 妻の話。朝、書斎の雨戸をあけたら、庭につぐみが来ている。一番乗り。しばらく庭先を例の歩き方で歩く。地面を滑走するように五、六歩進んで立ち止まる。そこでちょっとポーズをする。それからまた五、六歩進む。
 シベリアから日本海を渡って来たつぐみである。何かに書いてあるのを見たが、それによると、つぐみはシベリアの海岸をとび立つとき、小さな木切れをくわえて、木切れをくわえたまま海を渡る。群れでとぶのである。
 それが空高く飛ぶのでなくて、海面すれすれのところを飛ぶ。疲れて来ると、くわえた木切れにつかまって海に浮ぶ。
 しばらく休んで、また木切れをくわえたままとび立つ。そんなふうにして日本海を渡り、日本の海岸に辿り着く--というのである。それがつぐみの智慧である。」
(庄野潤三『星に願いを』より)


  *

『星に願いを』は、わたしがこころのなかでおじいちゃんのように慕っている、庄野潤三さんの晩年の小説で、散文だけれども、お若いころ詩人の伊藤静雄さんに師事して、詩人をこころざした、けれどもやがて「あなたはおっとりとした、散文を書くといい」と師匠にアドバイスされ、小説に転向した庄野さんの散文のねっこには、「詩」があるとおもう。

ところで、つぐみでおもいだした、スピッツの「つぐみ」。

 「愛してる」それだけじゃ 足りないけど 言わなくちゃ

つぐみ(噤み)にもかかわらず、あるいは、だからこそ、「言わなくちゃ」ってところが、みそなんだとおもう。

大サビ、

 「愛してる」この命 明日には 尽きるかも
 言わなくちゃ 言わなくちゃ できるだけまじめに


てところ、ぐっとくる。
(これをアラフォーの、だけど年齢不詳の、少年、というか妖精、みたいなおじさん…には、
とてもみえないから、おにいさん、がうたっているところも、みそである。)

とにかく。
足りないけど(てか、恥ずかしいけど、)言わなくちゃ!
by neko-tree | 2011-03-18 07:28 | よかった詩さがしノート


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